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皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
鉄骨は作って終わりではありません。屋内・屋外・海浜・化学雰囲気・高温など、環境の苛酷さに応じて防錆・防食・防火の設計を選び、工場〜現場まで一貫した条件管理をやりきってこそ寿命が延びます。本稿では、①素地調整(Sa2.5等)と清浄度、②プライマー/中塗/上塗の組合せ、③溶融亜鉛めっきの“設計段階の約束事”、④耐火被覆(薄膜膨張型/セメント系)の選定と施工、⑤膜厚・露点・硬化の検査、⑥補修・タッチアップ、⑦コスト・段取り最適化まで、現場で事故らない粒度で整理します。
1|環境区分と仕様の考え方(まず“どこで”使うか)
• 屋内乾燥(C1〜C2相当):プライマー+上塗りの軽装で十分。機械室・オフィス等。
• 屋内多湿/屋外一般(C3):エポキシ中塗りを挟み、合計DFT(ドライ膜厚)を120〜180μm程度に。
• 工業・海岸・積雪寒冷(C4〜C5):重防食。エポキシ厚膜+上塗りフッ素/ウレタンで200〜320μm級。ボルト・エッジ重点管理。
• 化学・高温:耐薬品・耐熱系へ。仕様書で薬液・温度を特定し、汎用塗装の流用は避ける。
• 溶融亜鉛めっき(HDZ):単独or塗装併用(デュプレックス)で寿命大幅延長。設計段階で“めっき前提”の形状設計が必須。
2|素地調整(前処理)が9割:Sa2.5とアンカープロファイル
• 清浄度:ショット/グリットでSa2.5相当(ほぼ金属光沢、ミルスケール・錆除去)。油分・水分・塩分は塗装最大の敵。脱脂→ブラスト→除塵の順。
• アンカープロファイル:凹凸(目)が塗膜の食いつきを決める。指定粗さレンジ(例:40〜75μm)を比較板と記録写真で管理。
• エッジ処理:角は膜が薄くなりやすい。R面取り(1〜2mm)+ストライプコート(先行塗り)で薄膜化を防ぐ。✍️
• 溶接スパッタ・ピット:研磨で除去。ピット放置→ピンホール→錆の起点に。
3|塗料設計:プライマー→中塗り→上塗りの“相性”
• 亜鉛リッチプライマー:犠牲防食。溶接焼け周りは補修塗で導通確保。高力ボルトの摩擦面は仕様上塗装不可が基本(許容系は例外的)。
• エポキシ中塗り:バリア性・付着力に優れる。欠点は紫外線チョーキング→上塗りで保護。
• 上塗り(ウレタン/フッ素等):耐候・光沢保持。屋外長寿命はフッ素が有利だがコスト高。可視面のみグレードUPで費用最適化も。
• 水性・弱溶剤:臭気/VOC配慮や屋内現場で有効。乾燥条件に敏感、露点管理を厳密に。
• 配合・撹拌・ポットライフ:2液型は混合比・誘導時間・可使時間厳守。硬化不良は全面やり直しリスク。⏳
4|膜厚管理:ウェット→ドライ、角部薄膜と上塗回数の設計
• WFT→DFT換算:ウェット膜厚ゲージでWFTを測り、体積固形分からDFTを算出。各層ごとの記録を残す。
• エッジ・角部:角は30%薄くなりがち。ストライプコート+追加タッチで補正。
• ターゲットDFT:仕様DFT(例:下塗80+中塗80+上塗40=200μm)を層別に割当、一度に厚塗りしない。垂れ・割れの原因。
• 測定:磁気式/電磁式膜厚計の校正と抜取点のルール(各面×複数点)。
5|環境条件:温度・湿度・露点差・風速
• 露点差:鋼材表面温度と露点の差が3℃以上ないと結露→密着不良。非接触温度計+湿度計でログ化。
• 温湿度:塗装・硬化に適正レンジあり(例:5〜35℃、RH85%以下など)。朝露・夕方結露の時間帯に注意。
• 風・粉じん:屋外は風防・テントを用意。塗膜に砂塵混入すると外観・耐久低下。
6|溶融亜鉛めっき(HDZ):設計で勝負が決まる
• 排気/排液孔:閉断面(箱形・角管)は通気・排液孔を設計。なければ爆発・不均一の危険。孔径・位置は工場と事前協議。
• 重ね合わせ禁止:すき間は液体が残留→破裂・漏出→事故。スキマゼロor完全溶接のルール。
• 公差と変形:めっき浴で熱変形が起きる。板厚差の大きい構成は補強・治具で対策。
• 摩擦面(ボルト接合):HDZ面は摩擦係数低。すべり耐力型の摩擦面はめっき除去+指定前処理か、認定処理系を採用する設計判断が必要。
• 塗装併用(デュプレックス):HDZ後の表面調整(スイープブラスト)→プライマー→上塗り。密着性の良い専用下塗りを選ぶ。
7|耐火被覆:薄膜膨張型 vs セメント系(耐火時間30/60/90/120分)
• 薄膜膨張型(Intumescent):意匠性重視。火災時に発泡炭化層を形成して断熱。通常はプライマー→膨張材→トップコート。DFTは1〜3mm級で、重量軽・仕上がり良。屋外はトップコート必須。
• セメント系/吹付ロックウール:コスト・耐久に優れ厚膜で断熱。外観は荒い。下地メッシュや防錆下塗の相性確認が肝。
• 設計パラメータ:鋼材の断面係数(H/Am)で必要被覆厚が変動。柱・梁で要求が違うため部位別表を用意。
• 検査:膜厚ゲージ(針式/超音波)で多点測定。欠損/ピンホール/浮きは補修。
8|ボルト・溶接部の取り扱いと補修
• 高力ボルト摩擦面:原則塗装不可。養生→塗装→養生撤去の順を計画。
• 溶接焼け:プライマー焼損部はサンダー処理→清浄→補修塗で導通と膜厚を回復。
• 現場傷・切欠:指定補修塗料でタッチアップ。色差は可視面優先で上塗グレードを合わせる。
9|検査・記録:可視化とトレースで“後戻りゼロ”
• 検査表:前処理写真、粗さ値、WFT/DFTログ、温湿度・露点、乾燥/硬化時間、外観合否、補修記録。
• 膜厚ポイント:各面×複数点の規定を守る。薄い箇所は追い塗りで是正。
• 付着・硬化:必要に応じ付着試験や溶剤擦り(MEK等)で硬化確認。硬化不良は全面やり直しも選択肢。
• ラベル:塗装系統・日付・ロット・作業者をシール/刻印で現物管理。
10|コストと段取りの最適化 ⛓️
• デュプレックスの寿命メリットと初期コストの天秤。ライフサイクルで総コスト最小を狙う。
• 可視面集中:見えがかり面を上位塗装、非可視は標準でコスパ最適化。
• バッチ化:同系統・同色をまとめ塗りで段取り短縮。洗浄回数を削減。
• 天候読み:屋外塗装は晴天・低湿の連続日程を確保。夜露タイムの回避も工程表に明記。
11|安全・環境:人と周囲を守る
• 溶剤管理:引火・中毒リスク。防爆換気、静電気対策、火気厳禁。保護具(有機ガスマスク・手袋・ゴーグル)。
• VOC/臭気:周辺環境配慮。水性・弱溶剤系の採用や、負圧ブースで飛散抑制。
• 廃液・スラッジ:法令順守で処理。ラベル管理と回収記録を残す。
12|“今日から使える”チェックリスト ✅
☐ 前処理:Sa2.5相当/粗さレンジ確認/エッジR+ストライプコート
☐ 配合:2液比・誘導時間・ポットライフ遵守/撹拌均一
☐ WFT/DFT:層別記録/角部の薄膜補正済み
☐ 環境:露点差≥3℃/温湿度レンジ内/風防・防塵OK
☐ HDZ:排気・排液孔設計/重ね合わせ無し/摩擦面の扱い合意
☐ 耐火:部位別必要厚・検査計画/トップコート要否合意
☐ 養生:高力ボルト摩擦面の養生計画→撤去
☐ 溶接焼け補修:清浄→補修塗→導通確認
☐ 記録:前処理写真・膜厚・環境・補修・ロットをクラウド台帳
☐ 安全:保護具・防爆換気・廃液処理の手順確認
まとめ
防錆・防火は“下地と条件”の勝負です。素地調整・粗さ・露点差・膜厚を数字で管理し、HDZや耐火は設計段階から段取りに織り込む。タッチアップと記録までやり切れば、外観も寿命もクレーム耐性も一段上がります。次回は物流と配車の最適化。積載図・偏荷重・道路規制・揚重回数・共同配送まで、出荷→現場の“止めない運ぶ”を設計します。