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月別アーカイブ: 2025年11月

シンエイ工業のよもやま話~12~

皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です

 

鉄骨加工の成果物は「鋼材」だけではありません。モデル・図面・リスト・NCデータ・証憑をワンセットで納めて、はじめて現場が止まらず回ります。特に近年はBIM連携(IFC)、3D干渉チェック、DSTV/NC1出力、バーコード連携、改定管理(R管理)が“品質そのもの”として評価されます。本稿では、Tekla Structures等のBIM/CAD運用を前提に、受領→モデル化→接合設計→工作図→リスト→NC→承認→改定→出荷の実務を、現場がスムーズに建方できる粒度で解説します。🧭

 

1|上流入力を“整える”:受領情報の標準化 📨
• 受領データ:意匠・構造のIFC/REVIT/RVT、2D図(DWG/DXF/PDF)、仕様書、設計条件、荷重条件、接合方針、仕上げ(塗装/めっき/耐火)。
• 不明点のRFI:柱脚形式、柱梁接合(ダブルスカラップ/裏当て/全溶込みの要否)、高力ボルト等級・表面処理、ブレース端部、スリーブ・ダクト開口などはRFIで設計合意を取る。📝
• グリッド・レベル統一:通り芯・階高・基準レベルの共通座標を確定。モデル座標を実施設計モデルに追従させ、後工程のズレを防ぐ。

 

2|モデル作成と接合設計:干渉を先に潰す 🧩
• 部材入力:柱・梁・ブレース・胴差・母屋・間柱・階段・手すり・デッキ受け。部品属性(鋼種・板厚・長さ・切欠・仕口)を早期に埋める。
• 接合コンポーネント:エンドプレート、スチフナ、仕口プレート、スカラップ形状、開先、座金・シム、現場溶接/ボルトの明確化。
• 干渉チェック(Clash):梁貫通孔、スリーブ、デッキハンガー、階段・手すりのクリアランス。3Dで可視化→スクショ添付して設計合意を得る。📸
• 耐火被覆厚・仕上げ厚:部材干渉に影響。被覆厚の“余裕値”をモデル属性に保持しておくと後の手戻りを回避。🔥

 

3|部品符号・組立番号・番付ルール:現場で“迷わない”記号体系 🔤
• 部品番号(Part No.):同一形状・同一仕様は同一番号で束ねて製作ロットを最適化。異なる穴ピッチ・開先は別番号。
• 組立番号(Assembly/Single):現場の建方順序に合わせて通し番号化。階×通り×スパンのロジックを持たせ、番付表示に反映。
• 表記統一:文字高さ、配置、矢印方向、表裏の表記。逆付け・左右違いをゼロにする“視覚一貫性”。🔍

 

4|工作図(ショップ図)と承認図:AFC(Approved For Construction)までの道筋 📄✅
• 出図セット:①総合図(GA/Erection) ②組立図(Assembly) ③部品図(Single) ④ボルトリスト ⑤部品表(BOM) ⑥開口図/取合図 ⑦塗装仕様書。
• 寸法・公差:基準面、通り芯からの距離、直角・ねじれ・のど厚、穴径・ピッチ・面取り。測定基準を図中に明記。
• 接合記号:溶接記号(JIS/ISO)と高力ボルト表記(座金・ナット・座面処理)。記号の辞書を図枠に掲載。
• 承認ワークフロー:社内チェック→客先レビュー→コメント戻し→改定(R)→承認(AFC)。コメントログは案件フォルダで一元管理。🗂️

 

5|リスト化と見積・段取り:データで“勝つ” 📊
• BOM/BOQ:材料・部品・ボルト・塗装量を自動集計。材料歩留り計画と配材発注に直結。
• 建方順リスト:先行梁、仮設ブレース、クレーン可搬重量、揚重回数を前提に出荷順を並べ替え。
• 荷姿・梱包:現場クレーンのフック荷重・高さで吊り数を決め、ラッシング計画へ連動。🚚

 

6|NCデータ(DSTV/NC1/DXF)出力と現場設備連携 🧠⚙️
• DSTV/NC1:ドリルライン・バンドソー・コーピング・開先機・サーマル切断機に直結。孔位置・切欠き・マーキングをデータで指示。
• ポストプロセッサ:機種ごとの原点定義・回転方向・ツール番号を合わせる。テスト材で“穴芯ズレ”を検証してから量産。
• ケガキ・刻印:NCマーキング or レーザーマーキングを活用し、番付・向き・吊り位置を現物に転写。現場での取り違いゼロへ。🏷️
• エラー対策:NCエラーは図面改定の見落としが原因になりがち。NC再出力→版番号更新→作業指示をワンセット運用に。🔁

 

7|改定管理(R管理)と差分配信:混乱を“構造的に”防ぐ 🧭
• 改定記号R:AFC後の変更はR1, R2…で管理。図面右下に改定履歴表、モデルにはリビジョン属性。
• 差分配信:変更範囲のみ雲マークと色分けで強調。現場配布は古い版の回収までがセット。
• BIM比較:前版vs新板を3Dで比較し、削除/追加/変更を色別ヒートマップで提示。📶

 

8|チェックリスト&図面テンプレ:誰がやっても同じ品質に ✅
• ショップ図チェック
☐ 基準寸法(通り芯・レベル)にブレなし/寸法起点が明示
☐ 穴径・ピッチ・面取り・摩擦面の注記完備
☐ 隅肉のど厚・溶接長・姿勢の記号が規格通り
☐ 柱脚詳細(ベースPL厚・アンカー配置・座金/ライナ)明記
☐ ブレース端部のエンドプレート・座屈拘束の取合い
☐ 塗装仕様(前処理、膜厚、色、可否部)/めっきの前後工程
☐ 部品番号・組立番号・番付表記の一貫性
• NCデータチェック
☐ 原点・回転方向・ツール番号の整合
☐ 角度孔・長孔の座標と姿勢
☐ マーキング内容(番付・向き・吊り位置)
☐ 試し加工材での穴芯・ピッチ検証(±0.5mm基準など社内基準)
• 改定配布チェック
☐ 旧版回収記録/新旧対照表の配布
☐ 変更箇所の雲表示/色分け
☐ 現場・工場・協力会社の配布先リスト更新

 

9|現場(建方)へ効く“情報の形” 📦🏗️
• 建方図/Erection Plan:揚重順序・仮設ブレース位置・高力ボルトの仮締エリア・本締順序を1枚で示す。
• ボルトスケジュール:部位別の本数・長さ・ワッシャ構成。回転角法/トルク法の採用とレンチ校正日を併記。🔩
• マーキング:現物の番付・向き・階・通り・スパンの読みやすさ。貼付シール+刻印の併用で可読性UP。
• 是正指示:軽微な穴修正・座金追加・肉盛りなど現場是正の許容範囲を表にして配布。

 

10|データ連携・DX:バーコードとダッシュボードで“止まらない工場”へ 📲
• バーコード/QR:部品番号に紐づけ、受入→加工→検査→塗装→出荷→現場受入までスキャンで追跡。トレーサビリティと進捗が同時に取れる。
• ダッシュボード:WIP、工程滞留、改定件数、一次合格率、NCエラー件数、出荷準備率をリアルタイム可視化。📊
• テンプレ資産:図枠・記号辞書・チェックリスト・承認フロー・RFI雛形を案件使い回しできる形で整備。

 

11|“今日から使える”運用Tips 💡
• 座標と基準の一本化:意匠・構造・設備の座標ズレを最初に潰す。ズレ=生涯クレーム。
• AFC前の先行加工は原則禁止:やむを得ないときは限定承認の記録と範囲を明確に。
• 改定は“通知→回収→配布”の3点セット:どれか1つ欠けると事故る。
• “読む前に見せる”:3Dビュー・アニメGIF・短尺動画で現場に伝える。テキストより視覚。🎥

 

まとめ 🧭
工作図・BIM/CADの真価は、「図面を描く」から「現場を止めないデータ運用」へ発想を転換できるかに尽きます。モデル→図面→リスト→NC→承認→改定→出荷のチェーンを一気通貫で標準化し、可視化とトレーサビリティを両立させれば、手戻りは激減し、納期と粗利が安定します。次回は高力ボルト完全攻略。F10Tの基礎、仮締め→本締め→確認、回転角法/トルク法、摩擦面処理、レンチ校正まで“現場で効く手順書”を作ります。🔩📘

 

 

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シンエイ工業のよもやま話~11~

皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です

 

鉄骨加工における材料選定は、強度(許容応力度)だけでは決まりません。溶接性・靱性・板厚方向特性(Z材)・寸法精度・防錆仕様・入手性・価格のバランスこそが現場の勝敗を分けます。本稿では、JIS記号の読み方、ミルシート(材質証明書)の要点、炭素当量(Ceq/PCM)を用いた予熱判断、H形鋼・鋼板・角形鋼管・一般構造用鋼管の使い分け、Z材や耐候性鋼の扱い方まで、“選定→受入→加工→建方”の実務目線で整理します。

 

1|JIS記号の“読み方”早見 
• SS400:一般構造用圧延鋼材。入手性・価格・加工性のバランスが良い“定番”。主に二次部材・ブラケット・補剛などへ。
• SM400/SM490:溶接構造用圧延鋼材。溶接性・靱性を重視する主要骨組に適合。SM490は主柱・主梁でも定番。
• SN400/SN490(A/B/C):溶接構造用鋼板(SN)。A/B/Cは主に靱性(シャルピー衝撃値の保証レベルや温度帯)の違いを示し、地震動を強く考慮する部位にはSN490B/Cが選ばれやすい。
• STK400/490(丸鋼管):一般構造用炭素鋼鋼管。手すり・ブレース・軽量架台など。
• STKR400/490(角・矩形管):電縫角形鋼管。梁成の低い梁・小梁、意匠柱、手すりフレームなどで多用。
• H形鋼(JIS G 3192):寸法公差・曲がり・ねじれが規定。工場受入で通り・反り・ねじれを必ず確認。
TIP:板厚方向の割れ(層状割れ)リスクがある厚板の溶接取合い(T継手で引張りが板厚方向にかかる等)では、Z材(Z15/Z25/Z35など)の指定を検討。

 

2|“用途×仕様”の選び分けマトリクス
用途 推奨材 ねらい 注意点
主柱・主梁(多層) SM490 / SN490B,C 溶接性+靱性 施工温度・予熱管理、厚板のZ材要否
単層・中小スパン梁 SS400 / SM400 コスパ+加工性 継手靱性が要らないところで使う
ブレース STK/SS/SM(設計による) 軽量化・座屈耐性 端部仕口の溶接条件・孔精度
意匠柱・梁(露出) STKR / 鋼板 組立箱形 仕上げ性 継手は裏当・全周溶接、歪対策
階段・手すり STKR / SS400 施工性・外観 角部の塗膜薄化、溶接仕上げ
屋外・重防食 溶融亜鉛めっき or 耐候性鋼 耐久 めっき前後の加工順序・溶接対策

 

3|ミルシート(材質証明書)の必読ポイント
1) 規格・鋼種:JIS記号、強度区分、製造法(キルド/セミキルドなど)。
2) ヒートNo.:鋳番。トレーサビリティの起点。部材番付と紐付けます。
3) 化学成分:C・Si・Mn・P・S・Nb・V・Ti・Ni・Cr・Cuなど。Ceq/PCM計算の材料。
4) 機械的性質:降伏点・引張強さ・伸び・(必要に応じ)シャルピー衝撃値。
5) 寸法:板厚・幅・長さ/H形鋼のサイズ。許容差も参照。
6) 熱処理・付帯処理:正火・調質・ショット+プライマー等。
受入儀礼:ミルシート⇆現品のヒートNo.・寸法の突合せ→外観(錆・傷)→曲がり・ねじれ→受入印。ここでの見逃しは後の工程でコスト×3になります。

 

4|溶接性を数値で掴む:CeqとPCM 
• 炭素当量Ceq(例):Ceq ≈ C + Mn/6 + (Cr+Mo+V)/5 + (Ni+Cu)/15
値が高いほど硬化しやすく割れ感受性↑。
• PCM(溶接割れ感受性指数の簡易式)も同様に低いほど割れにくい指標。
• 運用の勘所:
o 薄板×Ceq低:無予熱〜軽微な予熱でOK。
o 厚板×Ceq中〜高:予熱温度↑+入熱管理+水素対策(乾燥)を強化。
o 高拘束継手(箱形柱ダイヤフラム等)は、Ceqが低くても割れリスク。順序・仮付・開先清浄を厳密に。

 

5|H形鋼・鋼板の“クセ”と受入検査
• 形鋼(H・溝・山形):通り(カンバー)・そり(スイープ)・ねじれを測定。許容超過は初期矯正を実施してから加工へ。
• 鋼板:板厚偏差と耳波(エッジの波打ち)をチェック。開先加工・プレス曲げ時の反発量も想定。
• 材長取り(歩留り):端切れはスペーサ・当て板へ再利用。余長は仕上げで吸収できるよう計画。

 

6|角形鋼管(STKR)・構造用鋼管(STK)の勘所
• R形状:STKRはコーナーRがあり、意匠で見え方が変わる。仕上げの磨き・塗装でR部の膜厚不足に注意。
• 寸法公差:角管の対辺長と対角(スクエア度)を要チェック。フランジプレートの合わせに影響。
• 孔あけ:角管の片肉抜け・バリに注意。後工程での高力ボルト締結を見据え、面取り・バリ取りを標準化。

 

7|Z材(板厚方向特性)と層状割れ対策
• 層状割れは板厚方向に引張り応力がかかると発生しやすい。硫化物介在物の延伸が誘因。
• Z材(Z15/Z25/Z35など)は板厚方向の絞り保証で、厚板のT継手や箱形柱ダイヤフラムで効果大。
• 設計×製作の握り:Z材の指定がなければ開先や継手形状でリスク低減を図るか、材料置換提案を早期に。

 

8|防錆・表面処理の選択肢と順序 
• ショッププライマー:ブラスト+一次防錆。溶接部の焼け戻りは後補修で膜厚回復。
• 溶融亜鉛めっき:屋外・海浜で強力。めっき前加工(孔あけ・タップ)を済ませ、溶接はめっき後に極力避ける。やむを得ない場合はめっき剥離→溶接→補修の段取りを明文化。
• 耐候性鋼:塗装レス運用を想定。排水設計と付着塵の堆積防止が寿命を左右。意匠と維持管理計画をセットで。

 

9|材料手配と在庫の“勝ちパターン”
• 長尺のまとめ買い:歩留り最適化と運賃効率UP。ただし保管スペースと変形リスクを見込む。
• 標準化:板厚・サイズを社内標準に寄せ、端材活用と段取り替えを減らす。
• 代替ルール:SN⇄SM、STKR⇄鋼板組立の許容範囲を社内で明文化。
• 納期前倒し:厚板・Z材・特殊材は納期長。工程計画で先行手配を習慣化。⏳

 

10|“今日から使える”受入チェックリスト ✅
☐ ミルシート:規格・鋼種・ヒートNo.・化学成分・機械的性質を確認
☐ 現品とミルシートのヒートNo.突合せ完了
☐ 形鋼:通り・そり・ねじれが許容内/必要なら矯正
☐ 板:板厚偏差と耳波の確認、反発量の見込み
☐ STKR/STK:対辺長・対角、孔あけ面取り、バリ取り
☐ Z材指定の有無と適用部位の確認
☐ 表面処理仕様(ショッププライマー/めっき/耐候)の前提と工程順序の共有
☐ 受入写真・寸法記録の保存(クラウド台帳)

 

まとめ
材料選定は“強度”だけでなく“溶接性・靱性・板厚方向特性・表面処理・入手性・コスト”の総合設計です。Ceq/PCMで定量判断し、Z材や防錆仕様の是非を早期に握ることで、現場の手戻り・コスト高騰を防げます。次回は工作図・BIM/CADの実務に進み、Tekla等の3DモデルからNCデータ生成→干渉チェック→部品符号・改定管理まで、“データが現場を動かす”仕組みを分解します。

 

 

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