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皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
鉄骨加工の成果物は「鋼材」だけではありません。モデル・図面・リスト・NCデータ・証憑をワンセットで納めて、はじめて現場が止まらず回ります。特に近年はBIM連携(IFC)、3D干渉チェック、DSTV/NC1出力、バーコード連携、改定管理(R管理)が“品質そのもの”として評価されます。本稿では、Tekla Structures等のBIM/CAD運用を前提に、受領→モデル化→接合設計→工作図→リスト→NC→承認→改定→出荷の実務を、現場がスムーズに建方できる粒度で解説します。🧭
1|上流入力を“整える”:受領情報の標準化 📨
• 受領データ:意匠・構造のIFC/REVIT/RVT、2D図(DWG/DXF/PDF)、仕様書、設計条件、荷重条件、接合方針、仕上げ(塗装/めっき/耐火)。
• 不明点のRFI:柱脚形式、柱梁接合(ダブルスカラップ/裏当て/全溶込みの要否)、高力ボルト等級・表面処理、ブレース端部、スリーブ・ダクト開口などはRFIで設計合意を取る。📝
• グリッド・レベル統一:通り芯・階高・基準レベルの共通座標を確定。モデル座標を実施設計モデルに追従させ、後工程のズレを防ぐ。
2|モデル作成と接合設計:干渉を先に潰す 🧩
• 部材入力:柱・梁・ブレース・胴差・母屋・間柱・階段・手すり・デッキ受け。部品属性(鋼種・板厚・長さ・切欠・仕口)を早期に埋める。
• 接合コンポーネント:エンドプレート、スチフナ、仕口プレート、スカラップ形状、開先、座金・シム、現場溶接/ボルトの明確化。
• 干渉チェック(Clash):梁貫通孔、スリーブ、デッキハンガー、階段・手すりのクリアランス。3Dで可視化→スクショ添付して設計合意を得る。📸
• 耐火被覆厚・仕上げ厚:部材干渉に影響。被覆厚の“余裕値”をモデル属性に保持しておくと後の手戻りを回避。🔥
3|部品符号・組立番号・番付ルール:現場で“迷わない”記号体系 🔤
• 部品番号(Part No.):同一形状・同一仕様は同一番号で束ねて製作ロットを最適化。異なる穴ピッチ・開先は別番号。
• 組立番号(Assembly/Single):現場の建方順序に合わせて通し番号化。階×通り×スパンのロジックを持たせ、番付表示に反映。
• 表記統一:文字高さ、配置、矢印方向、表裏の表記。逆付け・左右違いをゼロにする“視覚一貫性”。🔍
4|工作図(ショップ図)と承認図:AFC(Approved For Construction)までの道筋 📄✅
• 出図セット:①総合図(GA/Erection) ②組立図(Assembly) ③部品図(Single) ④ボルトリスト ⑤部品表(BOM) ⑥開口図/取合図 ⑦塗装仕様書。
• 寸法・公差:基準面、通り芯からの距離、直角・ねじれ・のど厚、穴径・ピッチ・面取り。測定基準を図中に明記。
• 接合記号:溶接記号(JIS/ISO)と高力ボルト表記(座金・ナット・座面処理)。記号の辞書を図枠に掲載。
• 承認ワークフロー:社内チェック→客先レビュー→コメント戻し→改定(R)→承認(AFC)。コメントログは案件フォルダで一元管理。🗂️
5|リスト化と見積・段取り:データで“勝つ” 📊
• BOM/BOQ:材料・部品・ボルト・塗装量を自動集計。材料歩留り計画と配材発注に直結。
• 建方順リスト:先行梁、仮設ブレース、クレーン可搬重量、揚重回数を前提に出荷順を並べ替え。
• 荷姿・梱包:現場クレーンのフック荷重・高さで吊り数を決め、ラッシング計画へ連動。🚚
6|NCデータ(DSTV/NC1/DXF)出力と現場設備連携 🧠⚙️
• DSTV/NC1:ドリルライン・バンドソー・コーピング・開先機・サーマル切断機に直結。孔位置・切欠き・マーキングをデータで指示。
• ポストプロセッサ:機種ごとの原点定義・回転方向・ツール番号を合わせる。テスト材で“穴芯ズレ”を検証してから量産。
• ケガキ・刻印:NCマーキング or レーザーマーキングを活用し、番付・向き・吊り位置を現物に転写。現場での取り違いゼロへ。🏷️
• エラー対策:NCエラーは図面改定の見落としが原因になりがち。NC再出力→版番号更新→作業指示をワンセット運用に。🔁
7|改定管理(R管理)と差分配信:混乱を“構造的に”防ぐ 🧭
• 改定記号R:AFC後の変更はR1, R2…で管理。図面右下に改定履歴表、モデルにはリビジョン属性。
• 差分配信:変更範囲のみ雲マークと色分けで強調。現場配布は古い版の回収までがセット。
• BIM比較:前版vs新板を3Dで比較し、削除/追加/変更を色別ヒートマップで提示。📶
8|チェックリスト&図面テンプレ:誰がやっても同じ品質に ✅
• ショップ図チェック
☐ 基準寸法(通り芯・レベル)にブレなし/寸法起点が明示
☐ 穴径・ピッチ・面取り・摩擦面の注記完備
☐ 隅肉のど厚・溶接長・姿勢の記号が規格通り
☐ 柱脚詳細(ベースPL厚・アンカー配置・座金/ライナ)明記
☐ ブレース端部のエンドプレート・座屈拘束の取合い
☐ 塗装仕様(前処理、膜厚、色、可否部)/めっきの前後工程
☐ 部品番号・組立番号・番付表記の一貫性
• NCデータチェック
☐ 原点・回転方向・ツール番号の整合
☐ 角度孔・長孔の座標と姿勢
☐ マーキング内容(番付・向き・吊り位置)
☐ 試し加工材での穴芯・ピッチ検証(±0.5mm基準など社内基準)
• 改定配布チェック
☐ 旧版回収記録/新旧対照表の配布
☐ 変更箇所の雲表示/色分け
☐ 現場・工場・協力会社の配布先リスト更新
9|現場(建方)へ効く“情報の形” 📦🏗️
• 建方図/Erection Plan:揚重順序・仮設ブレース位置・高力ボルトの仮締エリア・本締順序を1枚で示す。
• ボルトスケジュール:部位別の本数・長さ・ワッシャ構成。回転角法/トルク法の採用とレンチ校正日を併記。🔩
• マーキング:現物の番付・向き・階・通り・スパンの読みやすさ。貼付シール+刻印の併用で可読性UP。
• 是正指示:軽微な穴修正・座金追加・肉盛りなど現場是正の許容範囲を表にして配布。
10|データ連携・DX:バーコードとダッシュボードで“止まらない工場”へ 📲
• バーコード/QR:部品番号に紐づけ、受入→加工→検査→塗装→出荷→現場受入までスキャンで追跡。トレーサビリティと進捗が同時に取れる。
• ダッシュボード:WIP、工程滞留、改定件数、一次合格率、NCエラー件数、出荷準備率をリアルタイム可視化。📊
• テンプレ資産:図枠・記号辞書・チェックリスト・承認フロー・RFI雛形を案件使い回しできる形で整備。
11|“今日から使える”運用Tips 💡
• 座標と基準の一本化:意匠・構造・設備の座標ズレを最初に潰す。ズレ=生涯クレーム。
• AFC前の先行加工は原則禁止:やむを得ないときは限定承認の記録と範囲を明確に。
• 改定は“通知→回収→配布”の3点セット:どれか1つ欠けると事故る。
• “読む前に見せる”:3Dビュー・アニメGIF・短尺動画で現場に伝える。テキストより視覚。🎥
まとめ 🧭
工作図・BIM/CADの真価は、「図面を描く」から「現場を止めないデータ運用」へ発想を転換できるかに尽きます。モデル→図面→リスト→NC→承認→改定→出荷のチェーンを一気通貫で標準化し、可視化とトレーサビリティを両立させれば、手戻りは激減し、納期と粗利が安定します。次回は高力ボルト完全攻略。F10Tの基礎、仮締め→本締め→確認、回転角法/トルク法、摩擦面処理、レンチ校正まで“現場で効く手順書”を作ります。🔩📘
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
鉄骨加工における材料選定は、強度(許容応力度)だけでは決まりません。溶接性・靱性・板厚方向特性(Z材)・寸法精度・防錆仕様・入手性・価格のバランスこそが現場の勝敗を分けます。本稿では、JIS記号の読み方、ミルシート(材質証明書)の要点、炭素当量(Ceq/PCM)を用いた予熱判断、H形鋼・鋼板・角形鋼管・一般構造用鋼管の使い分け、Z材や耐候性鋼の扱い方まで、“選定→受入→加工→建方”の実務目線で整理します。
1|JIS記号の“読み方”早見
• SS400:一般構造用圧延鋼材。入手性・価格・加工性のバランスが良い“定番”。主に二次部材・ブラケット・補剛などへ。
• SM400/SM490:溶接構造用圧延鋼材。溶接性・靱性を重視する主要骨組に適合。SM490は主柱・主梁でも定番。
• SN400/SN490(A/B/C):溶接構造用鋼板(SN)。A/B/Cは主に靱性(シャルピー衝撃値の保証レベルや温度帯)の違いを示し、地震動を強く考慮する部位にはSN490B/Cが選ばれやすい。
• STK400/490(丸鋼管):一般構造用炭素鋼鋼管。手すり・ブレース・軽量架台など。
• STKR400/490(角・矩形管):電縫角形鋼管。梁成の低い梁・小梁、意匠柱、手すりフレームなどで多用。
• H形鋼(JIS G 3192):寸法公差・曲がり・ねじれが規定。工場受入で通り・反り・ねじれを必ず確認。
TIP:板厚方向の割れ(層状割れ)リスクがある厚板の溶接取合い(T継手で引張りが板厚方向にかかる等)では、Z材(Z15/Z25/Z35など)の指定を検討。
2|“用途×仕様”の選び分けマトリクス
用途 推奨材 ねらい 注意点
主柱・主梁(多層) SM490 / SN490B,C 溶接性+靱性 施工温度・予熱管理、厚板のZ材要否
単層・中小スパン梁 SS400 / SM400 コスパ+加工性 継手靱性が要らないところで使う
ブレース STK/SS/SM(設計による) 軽量化・座屈耐性 端部仕口の溶接条件・孔精度
意匠柱・梁(露出) STKR / 鋼板 組立箱形 仕上げ性 継手は裏当・全周溶接、歪対策
階段・手すり STKR / SS400 施工性・外観 角部の塗膜薄化、溶接仕上げ
屋外・重防食 溶融亜鉛めっき or 耐候性鋼 耐久 めっき前後の加工順序・溶接対策
3|ミルシート(材質証明書)の必読ポイント
1) 規格・鋼種:JIS記号、強度区分、製造法(キルド/セミキルドなど)。
2) ヒートNo.:鋳番。トレーサビリティの起点。部材番付と紐付けます。
3) 化学成分:C・Si・Mn・P・S・Nb・V・Ti・Ni・Cr・Cuなど。Ceq/PCM計算の材料。
4) 機械的性質:降伏点・引張強さ・伸び・(必要に応じ)シャルピー衝撃値。
5) 寸法:板厚・幅・長さ/H形鋼のサイズ。許容差も参照。
6) 熱処理・付帯処理:正火・調質・ショット+プライマー等。
受入儀礼:ミルシート⇆現品のヒートNo.・寸法の突合せ→外観(錆・傷)→曲がり・ねじれ→受入印。ここでの見逃しは後の工程でコスト×3になります。
4|溶接性を数値で掴む:CeqとPCM
• 炭素当量Ceq(例):Ceq ≈ C + Mn/6 + (Cr+Mo+V)/5 + (Ni+Cu)/15
値が高いほど硬化しやすく割れ感受性↑。
• PCM(溶接割れ感受性指数の簡易式)も同様に低いほど割れにくい指標。
• 運用の勘所:
o 薄板×Ceq低:無予熱〜軽微な予熱でOK。
o 厚板×Ceq中〜高:予熱温度↑+入熱管理+水素対策(乾燥)を強化。
o 高拘束継手(箱形柱ダイヤフラム等)は、Ceqが低くても割れリスク。順序・仮付・開先清浄を厳密に。
5|H形鋼・鋼板の“クセ”と受入検査
• 形鋼(H・溝・山形):通り(カンバー)・そり(スイープ)・ねじれを測定。許容超過は初期矯正を実施してから加工へ。
• 鋼板:板厚偏差と耳波(エッジの波打ち)をチェック。開先加工・プレス曲げ時の反発量も想定。
• 材長取り(歩留り):端切れはスペーサ・当て板へ再利用。余長は仕上げで吸収できるよう計画。
6|角形鋼管(STKR)・構造用鋼管(STK)の勘所
• R形状:STKRはコーナーRがあり、意匠で見え方が変わる。仕上げの磨き・塗装でR部の膜厚不足に注意。
• 寸法公差:角管の対辺長と対角(スクエア度)を要チェック。フランジプレートの合わせに影響。
• 孔あけ:角管の片肉抜け・バリに注意。後工程での高力ボルト締結を見据え、面取り・バリ取りを標準化。
7|Z材(板厚方向特性)と層状割れ対策
• 層状割れは板厚方向に引張り応力がかかると発生しやすい。硫化物介在物の延伸が誘因。
• Z材(Z15/Z25/Z35など)は板厚方向の絞り保証で、厚板のT継手や箱形柱ダイヤフラムで効果大。
• 設計×製作の握り:Z材の指定がなければ開先や継手形状でリスク低減を図るか、材料置換提案を早期に。
8|防錆・表面処理の選択肢と順序
• ショッププライマー:ブラスト+一次防錆。溶接部の焼け戻りは後補修で膜厚回復。
• 溶融亜鉛めっき:屋外・海浜で強力。めっき前加工(孔あけ・タップ)を済ませ、溶接はめっき後に極力避ける。やむを得ない場合はめっき剥離→溶接→補修の段取りを明文化。
• 耐候性鋼:塗装レス運用を想定。排水設計と付着塵の堆積防止が寿命を左右。意匠と維持管理計画をセットで。
9|材料手配と在庫の“勝ちパターン”
• 長尺のまとめ買い:歩留り最適化と運賃効率UP。ただし保管スペースと変形リスクを見込む。
• 標準化:板厚・サイズを社内標準に寄せ、端材活用と段取り替えを減らす。
• 代替ルール:SN⇄SM、STKR⇄鋼板組立の許容範囲を社内で明文化。
• 納期前倒し:厚板・Z材・特殊材は納期長。工程計画で先行手配を習慣化。⏳
10|“今日から使える”受入チェックリスト ✅
☐ ミルシート:規格・鋼種・ヒートNo.・化学成分・機械的性質を確認
☐ 現品とミルシートのヒートNo.突合せ完了
☐ 形鋼:通り・そり・ねじれが許容内/必要なら矯正
☐ 板:板厚偏差と耳波の確認、反発量の見込み
☐ STKR/STK:対辺長・対角、孔あけ面取り、バリ取り
☐ Z材指定の有無と適用部位の確認
☐ 表面処理仕様(ショッププライマー/めっき/耐候)の前提と工程順序の共有
☐ 受入写真・寸法記録の保存(クラウド台帳)
まとめ
材料選定は“強度”だけでなく“溶接性・靱性・板厚方向特性・表面処理・入手性・コスト”の総合設計です。Ceq/PCMで定量判断し、Z材や防錆仕様の是非を早期に握ることで、現場の手戻り・コスト高騰を防げます。次回は工作図・BIM/CADの実務に進み、Tekla等の3DモデルからNCデータ生成→干渉チェック→部品符号・改定管理まで、“データが現場を動かす”仕組みを分解します。
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
「図面どおり」を“口約束”にしないのが品質管理(QC)の役割です。鉄骨は製造+建設のハイブリッド。工場内での精度・溶接品質・塗装耐久に加えて、現場建方で“すんなり入るか”まで保証してこそ本当の品質です。本稿は、日々の検査手順と記録、測定器管理、非破壊検査(UT/MT/PT)、判定基準、是正フロー、監査対応までを現場で使える粒度でまとめました。🧰📝
1|QCが“儲け”に直結する理由 💴➡️💹
• 手戻りは全てを高騰させる:再作・再塗装・再運搬・現場待機・工程延伸。1不良が複数工程のロスを連鎖させる。
• 早期検知>後工程発見:切断・孔あけ段階でのズレは“安く直せる”。溶接・塗装後は是正費×3の覚悟。
• トレーサビリティ=交渉力:材料ヒートNo.から溶接者コード、WPS番号、検査記録まで紐づけ。原因と責任範囲を明快に。🤝
2|検査体系の全体像(RACIで役割明確化)🗂️
• 受入検査:材料寸法・外観・材質証明(ミルシート)・ヒートNo.照合。R:品管、A:工場長。📦
• 工程内検査:切断後寸法、孔位置・径、開先角、組立仮付の直角・通り、溶接外観、歪み。R:各工程リーダー、A:生産管理。🛠️
• 中間検査(重要部):主柱・主梁・仕口、座金・スチフナの取付、穴ピッチ、仮付位置。R:品管、A:工場長。📌
• 最終検査:寸法総合、外観、NDT(必要部)、塗膜厚、表示・番付。R:品管、A:工場長。✅
• 出荷・現場受入:積載・ラッシング確認、現場寸法チェック、仮組有無。R:物流・現場、A:現場所長。🚚🏗️
3|寸法公差と“組立やすさ”の設計値 🎯
• 通り・直角・ねじれ:基準面を治具化し、ゲージ化(定規・当て板)で誰でも同じ測り方に。レーザー距離計・トータルステーションは最終確認に活用。📐
• 穴径・ピッチ・位置:NC孔は高精度だが、改定ミスが命取り。図面改定Rの突合せとNCデータの版管理を徹底。面取り・バリ取りはボルトかじり防止。🔩
• ベースプレート平面度・柱芯:建方でのレベル出し易さに直結。ワッシャ・ライナでの調整余地を前提に設計・製作。
• のど厚・余盛:隅肉は設計サイズの遵守が命。見た目を盛っても強くはならず、歪とコストが増すだけ。📏
• 社内基準の“図解化”:許容値は文章より図とNG事例写真で。合否判定を3秒でできる形に。🖼️
4|測定器・ゲージ管理(MPE/校正/ラベル)🧪
• 主要ツール:スケール・鋼製直角定規・巻尺(JIS1級推奨)・ハイトゲージ・デプスゲージ・レーザー距離計・トータルステーション(現場)、フィレットゲージ・ハイローゲージ(段差)・ピットゲージ。🧰
• 校正:年1回以上を基準に、校正記録とシリアルNo.で台帳管理。有効期限ラベルを本体に貼付し、期限切れは使用停止。
• MPE(最大許容誤差):測定器の不確かさを把握し、合否境界付近の判断は上位精度器で再測。
• トルクレンチ:締付工具は校正証明を現場提示できる状態で携行。⚙️
5|非破壊検査 UT/MT/PT の勘所 🔎
• UT(超音波):溶け込み不足・内部割れ・スラグ巻込み検知に有効。探触子・感度調整・カップラント管理。温度と面粗さで感度がぶれる点に注意。📡
• MT(磁粉):表面・近表面のき裂。湿式/乾式、白黒・蛍光。偏磁化(二方向)で見逃し防止。作業後は脱磁。🧲
• PT(浸透):非磁性材や仕上げ部の開口欠陥。前処理の脱脂が命。浸透→除去→現像→観察時間を守る。🧴
• 抜取率の決め方:重要継手は全数、標準部はAQLで抜取。仕様書・契約で事前合意し、現場判断にしない。
• 結果記録:写真・スケッチ・位置座標(通り×スパン×高さ)で再現性を確保。📷
6|塗装・前処理・環境条件の検査 🎨🌦️
• 素地調整:ブラスト/ショットで目標粗さ、ミルスケール・油分の除去。清浄度は目視サンプルで見える化。
• 塗膜厚(DFT):ウェット/ドライ双方で管理。角部の薄膜化に注意し、規定膜厚未達は“追い塗り”で是正。
• 環境条件:温度・湿度・露点差をログ化。結露条件下は塗装NGを徹底。🧪
• 付着・外観:ピンホール・たれ・白化・異物混入。必要に応じて付着試験(クロスカット等)で確認。
7|記録とトレーサビリティ:後から“辿れる”仕組み 🧷
• 材料台帳:ヒートNo.→部品No.→製品No.→現場番付まで一本線で追跡。
• 溶接マップ:継手ごとに溶接者コード・WPS番号・日付・NDT結果を記録。写真+QRで現場でも閲覧可に。📱
• 検査表テンプレ:受入・工程内・最終・塗装・出荷の各表を標準化。空欄を作らない設計にして記入漏れゼロ。
8|判定と是正:NCR→是正→再発防止→横展開 🔁
• NCR(不適合報告):現品隔離→識別→暫定処置。その日のうちに写真・数量・範囲を確定。
• MRB(判定会):再作・追溶接・肉盛り・機械加工・現場是正の可否を決定。構造安全と納期の両立を重視。
• 是正の作法:手順書化(範囲・方法・工具・検査)、過補修で母材を傷めないラインを明記。
• 原因究明:5Why/特性要因図。真因が設計・教育・設備・材料・環境のどこかを特定。
• 再発防止:標準改定、治具改良、教育、点検周期見直し。横展開で類似工程へ適用。📈
9|監査(内部/外部)と“即時提示”の仕組み 🗃️
• 証憑の棚:材料証明・校正記録・検査記録・WPS・NDT結果・塗膜厚ログ・出荷図を体系化。
• 即時提示:現場・客先にスマホで3タップ以内に提示できるよう、クラウドに集約。閲覧権限と改ざん防止を設定。
• 是正の実効性:監査指摘は期限・責任者・検証方法をセットに。完了報告は“写真+改定版”で。📌
10|QCダッシュボードとKPI 📊
• 一次合格率(工程別)/手直し率/不適合件数(百万溶接mmあたり)/校正期限遵守率/塗膜厚合格率/改定ミス件数。
• 現場ボードに当日不具合の“見える化”を掲示。翌朝ミーティングで是正+再発防止を回す。
11|“今日から使える”検査チェックリスト ✅
☐ 材料とミルシートの突合せ/ヒートNo.マーキング済
☐ NCデータの改定Rと図面Rが一致
☐ 基準面の治具化・通り/直角ゲージでOK判定
☐ 仮付位置・量の標準値を遵守
☐ 溶接外観:アンダーカット・オーバーラップ・ピット・割れの目視NGなし
☐ NDTの抜取率・部位が契約通り/結果を写真で保存
☐ 素地清浄・露点差・塗膜厚ログの保存
☐ 出荷前の番付・表示・保護材・ラッシング計画の確認
☐ すべての検査表に空欄なし/署名・日付完了
まとめ 🧭
品質は測り方の標準化+記録の一貫性+是正の速さで決まります。合否を“人の勘”から“誰が測っても同じ結果”に変えることで、現場トラブルは激減します。次回は材料学入門として、鋼材の規格・ミルシートの読み方・材料選定の勘所を、現場の判断に直結する形で解説します。🧪🔩
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
鉄骨加工の“品質の心臓”は溶接です。ビードは美観だけでなく、強度・靱性・疲労耐久・寸法精度まで左右します。本稿では、MAG/TIG/被覆アーク/SAWの使い分け、WPS/PQRの作法、典型欠陥のメカニズム、歪みを抑える溶接順序と治具、検査・是正までを現場に効く粒度でまとめます。
1|プロセスの使い分けと原理
• MAG(CO₂/MAG):鉄骨の主力。生産性・適用範囲が広く、板厚t=6〜40mmに多用。スパッタ管理とシールドガス流量(例:15〜25L/min)を一定に保つ。
• 被覆アーク(手溶接):狭所・現場補修・仮付最終化に有効。姿勢自由度が高い反面、技能差が品質差に直結。
• TIG:薄板・化粧・最終仕上げ、ルート部の初層などに。熱入力を緻密に制御でき、ビード外観に優れる。✨
• SAW(サブマージアーク):厚板の長尺直線。能率・溶込み安定に強み。フラックスの乾燥・回収・ふるいが品質鍵。⛏️
原理の超要約:アーク熱で母材・ワイヤを溶かし溶融池を形成→凝固で継手を作る。良品は清浄な溶融池と適正入熱から生まれる。
2|WPS/PQRの作り方と運用
• WPS(溶接施工条件書)には、母材・開先・ワイヤ径・極性・電流/電圧・速度・熱入力・予熱温度・パス間温度・層数・姿勢・シールドガス・乾燥条件を数値で明記。
• PQR(手順適合性記録):代表試験体で溶接→曲げ・硬さ・衝撃(必要に応じ)を実施し、WPSの妥当性を裏付け。
• 熱入力の目安(概念式):熱入力 ≈ (電流 × 電圧 × 60 × 係数) / 速度 。過大→粗大組織・歪大、過小→溶け込み不足・融合不良。
• 予熱・パス間:板厚・炭素当量・拘束度から設定。低すぎ→割れ、 高すぎ→靱性低下・歪増。
• 改定管理:現場の“口伝”で勝手に条件変更しない。改定番号(R)と履歴、掲示版/バーコードで最新版を即時共有。
3|継手・開先と姿勢の勘所
• 突合せ(V/Y/K):板厚・片面/両面・裏当て有無で選定。ルート間隔・開先角・面取りは治具とゲージで統一。
• 隅肉:設計サイズとのど厚を守る。過大は見かけ品質が上がっても入熱過多で歪・コスト増。
• 姿勢:下向>横向>立向>上向の順で難度UP。上向は入熱管理とトーチ角度がシビア。
4|典型欠陥のメカニズムと未然防止
• アンダーカット:電流過大・速度過大・トーチ角過大。→電流-10%・角度10〜15°に是正、繋ぎ目で一瞬減速。
• オーバーラップ:速度過小・電圧低下・入熱過多で溶融金属が乗る。→電圧+、速度+、繋ぎで“払う”。
• ピット/ブローホール:素地の水分・油分・錆・ガス流量不足。→前処理徹底、風速対策、ガス流量安定化。
• 溶け込み不足/融合不良:電流不足・角度不良・開先形状不備・スラグ巻込み。→条件復帰、ビード振り幅を狭く、清掃徹底。
• 割れ(熱割れ/冷割れ):過大拘束・高硬化組織・水素。→予熱・乾燥、層間温度管理、拘束緩和・反対称溶接。
5|歪みを制する段取りと溶接順序
• 対称溶接:左右・表裏を小パスで交互に。長大物はブロック溶接(分割)で収縮を分散。
• バックステップ:溶接方向と逆に短パスで刻む。収縮方向を制御。
• 仮付:小さく多点、要所に。強過ぎる仮付は割れ源。撤去容易な位置と長さをルール化。
• 治具:通り・直角・たわみ止め。治具設計で歪取り工数を前倒し削減。
• 余肉と仕上げ代:熱歪み見込みで余肉設定。仕上げで寸法合わせ。
• 温度管理:パス間温度計を常備、上限を超えたら冷却時間を置く。
6|材料・ワイヤ・ガス・消耗品の管理
• ワイヤ保管:未開封は乾燥、開封後は湿気厳禁。フラックス系は乾燥炉で規定温度管理。
• ガス:流量は一定、リーク点検。風の影響を受ける場所では風防や流量UP。
• 開先面の清浄:ミルスケール・油・塗膜は必ず除去。前処理が最大の欠陥予防。
7|技能・設備・校正
• 溶接機校正:年1回以上。電流電圧の指示誤差を把握し補正表を掲示。
• トーチ消耗品:ノズル・コンタクトチップの摩耗でアーク不安定→交換周期をKPI化。
• 技能認証:資格の範囲内作業を徹底。新人は外観合格率・手直し率で育成可視化。
8|現場溶接の落とし穴と対策
• 風・湿気:ブローホール頻発。風防・テント・結露チェック、露点差の確認。
• 姿勢強要:治具不足で無理姿勢→欠陥増。簡易治具・足場改善で“楽な姿勢”を作る。
• 安全:感電・火傷・火災。ケーブル損傷点検、火花養生、消火器配置、休憩時の電源OFF。
9|検査・判定と是正フロー
• 外観検査:ビード幅・余盛・連続性・ピット・アンダーカット。合否の寸法基準を図示化。
• 非破壊検査:UT/MT/PTの選定と抜取率(例:重要部100%、標準部20%など)を契約で明確化。
• 記録:溶接マップ、ロット、溶接者コード、WPS番号、校正記録を紐付け。トレーサビリティがクレーム抑止。
• 是正:削り・肉盛り・再溶接は範囲と手順を文書化。過補修で母材傷めない。
10|“今日から効く”チェックリスト ✅
☐ WPS最新版の掲示と改定番号一致
☐ 予熱・パス間温度の記録(温度チョーク/非接触計)
☐ ガス流量・風速の確認、風防の有無
☐ 開先の油・水分・塗膜除去済
☐ 仮付位置・長さの標準化
☐ 溶接順序の作業前ミーティング
☐ 溶接機校正日とトーチ消耗品の交換履歴
☐ 外観・NDTの合否基準表の配布
まとめ
溶接品質は入熱・清浄・姿勢・順序の積み上げで決まります。欠陥ゼロへの最短距離は、WPSを“守らせる仕組み”と、誰もが同じ条件で作業できる治具と段取りにあります。次回は、品質管理・検査のリアルをテーマに、許容公差・ゲージ・UT/MT/PTの勘所、判定・是正の“実戦手順”を掘り下げます。
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
“図面どおりの鉄骨”は、どのような工程を経て生まれるのか。ここでは朝の受け入れ検査から夜の積込まで、典型的な一日を時系列で追いかけます。現場に効くチェックリストも添えました。📝
7:30|受け入れ検査・段取り 🧾
• 入荷鋼材の確認:寸法、曲がり、錆、端面欠け、ヒートNo.。ミルシート突合せで材質トレース。
• 作業会議:当日計画、ボトルネック工程、応援要員、外注搬入時間の共有。
• 治具・工具点検:バンドソー、開先機、ドリル、ポジショナ、クレーン、溶接機、トルクレンチ校正。🧰
8:30|切断:正確さは“入口で決まる” ✂️
• バンドソー/丸鋸:H形鋼・山形鋼の直角切断。切粉処理と刃の摩耗管理が品質を左右。
• ガス/プラズマ:厚板・特殊形状。熱歪み見込みで余肉を残し、仕上げで整える。
• 材長取り:歩留り最適化。余長は後工程のスペーサや当て板に活用。📏
10:00|孔あけ:NCで“穴位置”を外さない 🕳️
• NCドリルライン:梁ウェブ・フランジの通し孔。切削油管理でビビリ抑制。
• ケガキ→ボール盤:特注・小物は手作業。冶具で反復精度を上げる。
• 穴品質:バリ取り、面取り、孔精度(±0.5mm目安を社内基準化)をチェック。
11:00|開先:溶接“成功率”を上げる前準備 🔺
• V/Y/K開先:板厚・姿勢・入熱から設計。ルート間隔と面取り角度はWPS基準で統一。
• ミルスケール除去:グラインダ、ショットで清浄化。油分残りはブローホール原因に。
12:00|昼休み&5S 🍱✨
• 治具・工具を元位置へ。切粉・スパッタ・端材を整理。午後の段取りが速くなる。🧹
13:00|組立:治具と仮付で“ズレ”を殺す 🧩
• 治具:直角・通り・たわみを制御。経験値が“段取り時間”と“歪取り量”に直結。
• 仮付溶接:小さく多点で配置。強すぎる仮付は割れと歪の温床。
• ケガキ・番付:部材記号、向き、ボルト種別を見て分かる表示に。
14:00|本溶接:入熱・姿勢・順序で“歪み”を制す 🔥
• MAG(CO₂/MAG):能率と汎用性。電流・電圧・送給の三位一体でビード安定。
• TIG:薄板・仕上げ重視・現場補修。
• SAW:厚板の長尺直線に最適。フラックス乾燥と回収管理が肝。
• 溶接順序:対称・反対側・分割多層で歪み低減。パス間温度管理を忘れず。🌡️
15:30|仕上げ・歪取り・面検 🔍
• ハンマ・ガスヒートで矯正。過熱による材質劣化に注意。
• 溶接外観:アンダーカット、オーバーラップ、ピット、割れ、気孔の一次検査。
• 寸法公差:直角・通り・穴ピッチ・基準面をゲージで確認。記録はロット単位で。📑
16:30|塗装前処理・塗装 🎨
• 前処理:ブラスト/ショットで素地調整(Sa2.5目安)。
• プライマー:亜鉛リッチやエポキシ系など仕様に準拠。膜厚はウェット/ドライで管理。
• 環境:温度・湿度・露点差を監視。結露条件下は塗装NG。🌦️
18:00|表示・積込・ラッシング 🏷️⛓️
• 番付・向き、取合い注意、吊り位置を明記。傷防止の当て木・保護材を準備。
• ラッシング:荷重・ブレーキ時の横圧を考慮。偏荷重は危険。ドライバーと最終確認。
現場に効くチェックリスト ✅
☐ 材料とミルシートの突合せ完了
☐ NCデータと図面改定の整合(改定記号Rの取り違い防止)
☐ 仮付位置・量の標準化
☐ WPS遵守(電流・電圧・速度・予熱・パス間温度)
☐ 非破壊検査の抜取%と頻度の事前合意
☐ 塗装の露点管理と膜厚記録
☐ 積載図とラッシング計画の承認
まとめ 📝
鉄骨製作の品質は“段取りと標準化”で決まります。ボトルネックの可視化、治具設計、NCデータの信頼性、WPSの運用、そして現場との情報連携。これらを地道に積み上げることが、手戻りゼロ/再作ゼロへの最短ルートです。次回は溶接に特化して、実務のノウハウと不具合ゼロのコツを掘り下げます。💪
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
「鉄骨加工って、結局なにをしているの?」——建物やプラント、倉庫、商業施設、学校、橋梁など、私たちの周囲に立つ“フレーム”を、図面どおりに安全・高品質・期日内で作り、現場で建てられる状態まで仕上げるのが鉄骨加工業の使命です。
本稿では、元請・設計・ファブ(鉄骨製作工場)・現場施工(建方)・検査機関など多くの関係者が連動する全体像を、やさしく・実務目線で解説します。初学者にも、現場担当の実務者にも「俯瞰地図」として役立つはずです。
1|プロジェクトの流れ(超要約)
1. 計画・設計:意匠・構造設計がBIM/CADで骨組みを定義。部材断面(H形鋼、溝形鋼、角形鋼管など)や材質(SS400、SN490 ほか)、接合方式(溶接・高力ボルト)を決定。
2. 見積・契約:ファブは図面・数量から積算し、加工費・材料費・運搬費・建方費・塗装費などを見積。コストとリスク(納期、仕様変更)を織り込みます。
3. 詳細設計(ショップ図):工作図・部品図・ボルトリスト・治具設計・材長取りを詰めます。Teklaなどの3DモデルからNCデータ(切断・孔あけ)を生成。
4. 材料調達:ミルシート(材質証明)付き鋼材を手配。入荷後、寸法・外観・ヒートNo.を確認し受け入れ検査。
5. 製作:切断→孔あけ→開先→けがき→組立→仮付→本溶接→歪取り→仕上げ→塗装→表示の順で進行。各工程で中間検査を行い、トレーサビリティを保持。⚙️
6. 出荷・運搬:積載計画(全長・重量・偏荷重)とラッシングを設計。道路使用や幅員、橋荷重もチェック。
7. 建方(現場組立):クレーン計画・揚重計画・玉掛け・高力ボルト本締め・現場溶接。仮ボルト→本締め→トルク確認→マーキングまで。
8. 検査・引渡し:寸法・通り・直角・レベル、超音波探傷(UT)、磁粉探傷(MT)などの非破壊検査、塗膜厚測定、是正・再検査を経て完了。✅
2|鉄骨“価値”のコア:QCDSE
• Q(品質):強度・剛性・靱性・寸法公差・溶接品質・塗装耐久・トレーサビリティ。
• C(コスト):材料歩留り、治具・段取り、ロット最適化、外注活用、再作業の削減がカギ。
• D(納期):上流での図面FIX、NC化による自動化、ボトルネック把握、二交替などの運用。⏱️
• S(安全):火災・感電・挟まれ・飛来・墜落のリスク管理。KY(危険予知)+5S+保護具。
• E(環境):前処理・塗装のVOC、研磨粉、端材リサイクル、電力削減、LCA/CO2管理。
3|コスト構造と“儲けどころ”
• 材料費が最大。材長取りと歩留り最適化、端材再利用で差が出る。
• 加工費は段取りとタクトタイム短縮、セット替えの削減で効く。
• 塗装費は仕様で上下。亜鉛リッチ、溶融亜鉛めっき、耐火被覆など要件の早期確定が重要。
• 物流費は積載効率・ルート・混載の工夫で最適化。
4|“手戻り”を防ぐ要点 ✍️
• 設計照合:工作図レビュー会を早めに。干渉・現場取合い・階段・手すり・ブレース・梁貫通をBIMで潰す。
• 品質条件の明確化:溶接WPS、許容欠陥、塗装仕様、検査手順、トルク管理を契約前に文書化。
• 変更管理:RFI(照会)→承認→履歴管理。口約束はNG。
5|現場との“いい関係”
• 揚重計画と建方順序を共有。先行部材・仮設材のマーキングを明確に。
• ボルト供給責任と工具校正の管理。レンチ校正記録は現場で提示できるように。
• 是正の即応:溶接肉盛り、座金追加、スチフナ追加など、手配と承認ルートを短く。
6|用語ミニ辞典
• WPS/PQR:溶接施工条件書と手順の適合性証明。
• UT/MT/PT:超音波・磁粉・浸透探傷の非破壊検査。
• F10T:高力ボルトの強度区分。仮→本締め→トルク確認。
• トレーサビリティ:ヒートNo.で材料→部品→製品→現場まで追跡。
7|まとめ ✅
鉄骨加工業は“製造業”であると同時に“建設業”でもあります。設計・製作・物流・建方・検査を一気通貫でデザインし、“QCDSE”の最適点を狙うことが勝ち筋です。次回は、工場ラインの1日を追いかけながら、実務のディテールに踏み込みます。
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
~“揺れに強い骨”をつくる~
耐震性能を引き出す鍵は、高力ボルト・溶接・柱脚の三点。どれか一つでも甘いと、通り精度や長期耐久に響きます。現場で役立つ実務の型を、ミスが起きやすい順にまとめました。
目次
保管:乾燥・未開封・ロット別。サビ・油分は締付性能に直結
穴・座面:切粉除去/座面の平滑性確認(異物はNG)
試し締め:当日ロットで工具校正→本番へ
締付手順:本数→対角→外周の順で段階締付/マーキングで見える化
検査:軸力管理方式に合わせて記録(トルク・表示ピン・回転角等)
ありがちNG⚠️:仮締めのまま次工程へ。マーキング未実施は抜けの合図。
予熱・層間温度を計測・記録(低温時は特に)
開先精度・ルート間隔を統一し溶け込みを確保
歪み対策は対称溶接・短ビード・裏当てを使い分け
外観OKでも内部欠陥はあり得る→必要に応じUT/MT/PTを計画的に
写真は「開先→仮付→本溶接→外観→NDT結果」の時系列がわかるように。
アンカー位置・レベルを墨出し→二重確認
レベリング(ベース下):座金・ナットの接地面確保
建方後:通り・鉛直・建入れ調整→グラウトで剛結を完成
防錆:グラウト面・端部のタッチアップを忘れずに
基準柱で全体の芯を固定→梁で通り連結
階ごとに仮ブレースを計画配置し、本締め前の狂いを抑える
建方階層の完了定義(本締め/タッチアップ/清掃)を明確化
素地調整→下塗→中・上塗の工程を膜厚計で数値管理
耐火被覆(吹付・巻付)の仕上げ厚と欠損補修は写真で可視化
取合い(梁端・仕口)は先行タッチアップでサビ起点を作らない
玉掛け指示は手元・クレーン間で合図統一
開口部は先行手摺・親綱で恒常化
強風・雷雨の中止基準を施工計画書に明記し、毎朝周知
標準化部材(スプライス位置・仕口寸法)で製作を平準化
現場溶接の最小化:ボルト化と仮組確認で手戻り削減
写真台帳の自動化(クラウド/QR)で検査〜承認を短縮
高力ボルト 校正・マーキング完了
溶接 予熱・層間・外観・NDT記録
柱脚 建入れ・グラウト・タッチアップ
塗膜 膜厚・欠損補修・最終確認
安全 開口養生・墜落対策・風速基準
高力ボルト×溶接×柱脚の三点を“記録と順序”で管理すれば、品質は安定し、是正回数は激減します。
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
~“現場が止まらない”~
鉄骨は「図面通りに作って立てる」だけでは回りません。設計・製作・建方が一体となった段取りで、通り精度・工期・安全を同時に成立させるのがプロの仕事。この記事では、現場でそのまま使える勝ちパターンを、チェックリスト付きで解説します。✨
目次
基本設計・詳細検討(仕口・継手・耐火仕様)
施工図・現寸(衝突・納まり検証)
材料手配・トレーサビリティ設定(ミルシート紐づけ)
工場製作(開先→仮付→本溶接→矯正→孔あけ→仮組)
素地調整・塗装/耐火仕様の確認
出荷・輸送(番付・荷姿計画)
建方(クレーン計画・通り出し・本締め)
最終調整・検査・引渡し
コツ:“前工程で次工程の条件を確定”。未決のまま進めると全てが後手に回ります。
柱梁仕口:高力ボルト本数/ピッチ、座金の当たり、レンチクリアランス
梁成・スリーブ衝突:設備・ダクト・配管との干渉はBIMや干渉表で先消し
デッキ合成:スタッド位置と溶接可否、端部の座屈止め
柱脚:アンカー配置・ベースプレート厚・グラウト納まり
ヒートNo.→部材ID→台帳を一気通貫で紐づけ
端材は長さ・断面別で保管し、流用先を明記(歩留まりUP)
孔あけ・切断はネスティング最適化で残材率を見える化
溶接順序で歪みをコントロール(対向・対称・短ビード)
仮組検査で取合い・ボルト通りを事前確認
素地調整→下塗りは仕様書に沿って等級・膜厚を記録
孔精度・面取りで建方時のボルト入らない問題を撲滅
部材は番付順で積載、吊りポイントをマーキング
長尺物は撓み養生、塗装面の当たり養生を徹底
納入伝票に部材ID/番付/設置位置を明記し現場受入れを時短
揚重計画:作業半径・ジブ長・吊荷重表で余裕を確保
通り出し:基準通り(X→Y→高さ)で基準柱を先に決める
仮ボルト→本締めの順序・階ごとの仮ブレースを事前定義
強風・雷・降雨時の中止基準は明文化(現場裁量にしない)
柱鉛直・通り(レーザー/トランシットで記録)
高力ボルト:下穴清掃・ワッシャー面・締付順序・マークオフ
溶接部:外観(クレータ/アンダーカット)→必要に応じ非破壊検査
塗膜:膜厚・タッチアップ記録
仮設:手摺・親綱・開口養生の継続管理
「日付_工区_部位_内容」
全景(建方エリア) → 2) 部位(仕口・柱脚) → 3) 寸法UP(スケール写り込み)
是正後は同アングルで再撮。Before/Afterが一目で分かるように。
鉄骨工事は段取りの競技。設計→製作→建方を一本の線でつなぐだけで、通り不良・再作業・待ち時間が劇的に減ります。
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
目次
第4回は「鉄骨加工が支える建物の安全性」について深掘りしていきます。
鉄骨加工というと、「鉄を切ったり溶接したりして形にする」作業をイメージされる方が多いかもしれません。でも実は、それだけじゃないんです。
鉄骨は**建物の“骨組み”**にあたる部分。そこがしっかりしていなければ、どれだけ見た目が立派な建物でも、災害時に大きなリスクを抱えることになります。
今回は、鉄骨加工がいかにして“見えない部分”から私たちの暮らしを守っているのかをご紹介します。
鉄骨は、建物を支える最も基本的な構造材。特に高層ビルや工場、大型商業施設など、強い構造が求められる建物には欠かせません。
鉄骨加工の中でも、溶接は極めて重要な工程。
各部材を溶接して接合することで、ひとつの大きな構造体へと仕上げていきます。
接合強度がすべて
溶接の品質が低ければ、そこが建物の「弱点」になってしまう恐れも。正確な溶接こそが、全体の強度を保証するカギとなります。
職人の経験が光る場面
鉄材の厚み、素材の性質、温度、作業環境などによって、最適な溶接方法は変わります。そこを見極めて加工できるのが、熟練職人のすごいところです✨
耐震性の向上
地震大国・日本では、建物の耐震性が命を守る大きな要素です。しっかりと加工された鉄骨は、揺れにしなやかに対応しながらも、構造をしっかり保ちます。
風圧・積雪にも強く
特に高層ビルや橋などでは、風の力が想像以上に建物に影響します。雪国では、屋根にかかる重さへの配慮も不可欠。そうした外的負荷に耐える骨組みをつくるのが、鉄骨加工の真価です。
鉄骨の強度や品質を保証するには、加工後の検査が非常に重要です。加工が終わったからといって安心はできません。実際に現場に使う前に、いくつもの厳しいチェックが行われます。
目視検査
熟練職人によるチェックで、表面の凹凸・亀裂・焼けムラなどを確認します。
非破壊検査(NDT)
X線・超音波・磁粉探傷検査など、内部の欠陥まで調べる技術が用いられます。目には見えないひびや空洞も、ここで見つけ出すことができます。
建物が正確に組み立てられるためには、鉄骨の長さや角度、ボルト穴の位置などが図面どおりでなければいけません。
±1mm以内の精度が求められることも
とくに大型建築では、ほんの数ミリのズレが何十メートル先で大きなズレにつながることも。正確な測定と管理が徹底されています。
一部の鉄骨には、実際に力を加えて強度を確認するテストが行われます。
地震や荷重など、リアルな条件下での挙動をシミュレーションし、安全を確認します。
鉄骨加工は、ただ鉄を扱うだけの作業ではありません。
強度を支える確かな加工技術
見えない不具合も見逃さない徹底した検査体制
災害に負けない建物をつくるという社会的責任
こうした技術と信念の積み重ねが、私たちの暮らすビルや公共施設を支えています🏢🏠
次回【第5回】では、さらに深く掘り下げて「鉄骨加工と図面の関係性」をテーマにお届けします📐
図面どおりに仕上げることが、なぜそれほど重要なのか?建築現場のリアルに迫っていきます!
どうぞお楽しみに✨
皆さんこんにちは
株式会社シンエイ工業の更新担当の中西です
目次
第3回のテーマは「鉄骨加工の技術と機械」についてです。
鉄骨加工と聞くと、機械が自動でどんどん形をつくっていく…そんなイメージをお持ちの方も多いかもしれません
でも実は、現場の最前線では熟練の職人技と最先端の機械技術がタッグを組んで、一つひとつの鉄骨を仕上げているんです!
今回は、昔ながらの手仕事の魅力と、進化を続けるハイテク機械の力、それぞれの役割にスポットを当ててみましょう✨
鉄骨加工には、実はまだまだ「人の手」が必要な工程がたくさんあります。
特に重要なのが、以下の2つの工程です。
溶接は、鉄骨を構造体として組み上げるうえで最も大切な工程のひとつです。
材料の厚みや形状、接合部の状態によって、熱の加減や作業スピードを微調整する必要があります。
職人さんは、目視だけでなく「音」や「手の感覚」でも状態を判断します。
鉄がちょうど良く溶けているときの音や色、手に伝わる振動など、**長年の経験でしか分からない“感覚”**がそこにはあります。
溶接後の鉄骨は、ただ組み上げれば終わりではありません。
表面のバリを削ったり、角を整えたりといった美観を整える仕上げ作業も大切な仕事です✨
また、最後の検査では、目視はもちろん、専用の道具や治具を使って細かな寸法やゆがみまでチェックします。
たとえ数ミリの誤差でも、建物全体の精度に影響が出ることもあるため、「妥協しない目」が品質を守っているのです
近年の鉄骨加工では、テクノロジーの進化によって作業効率や精度が飛躍的に向上しています。
ここでは、代表的な2つの機械をご紹介します!
この機械は、高温のレーザー光で鉄を正確に切断するハイテク装置です。
図面どおりの形に、まるで紙のようにスパッと切断できます。
精度はなんとミリ単位!
手作業では難しい曲線や複雑な穴あけも簡単にできるので、設計の自由度も広がります。
⏱️ さらに、手作業だと数時間かかる工程も、数分で完了。この時短効果は、工期短縮にも大きく貢献しています!
大量の鉄骨を短期間で加工する現場では、自動溶接ロボットが大活躍しています。
♂️ どの部品も均一な仕上がりになるのが大きな特徴。品質の安定性が非常に高く、大型ビルや橋梁などの高精度を求められる構造物にも最適です。
しかも、人が休んでいる夜間でもフル稼働可能!
納期がタイトなプロジェクトでは、機械の力がまさに頼もしい味方となります。
鉄骨加工は、「人の技術」と「機械の力」、どちらが欠けても成り立たない仕事です。
熟練の職人が、溶接や仕上げに魂を込める
最新機械が、スピードと精度を支える⚙️
両者のチームワークが、強く・美しく・安全な建物をつくり出している️
鉄骨加工の現場は、まさに“技術とテクノロジーの融合現場”。
見えないところで支えてくれている職人さんと機械たちに、ちょっと感謝したくなりますね